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処理 応用分野 イコライジング トーンコントロール
パラメトリックイコライザ
ハイパス/ローパスフィルターなどデコード Dolby Pro Logicなどのデコード 残響 各種の残響付加 遅延 スピーカ位置の補正 このページのTOPに戻る
家庭用オーディオと車内の環境を比較する と特に次の点が気になります。
左右のスピーカから耳までの距離が異なる
家庭用オーディオでは左右のスピーカの中心で聞くのが原則ですが、車内ではその原則を守ることができません。後席中央以外の席は右か左に寄っているので当然スピーカまでの距離が異なります。
周波数、位相特性が悪い
家庭用オーディオではスピーカは専用に設計されたボックス(エンクロージャ)に入っているので、最低限の特性は保証されています(設置場所の環境により影響を受けますがここでは触れません)
しかしカーオーディオではスピーカは音響設計されていないドアにマウントされ、エンクロージャとしての機能はほとんど期待できません。しかも薄い鉄板やプラスチックという共振しやすい素材で構成されていて理想的なエンクロージャからはかけ離れた特性を持っています。
この結果再生音には周波数によりピーク(音が大きくなる)やディップ(小さくなる)が多く発生し共振周波数の前後では位相も大きくずれます。
AlpineのDSP H-600のマニュアルを読むと、このような問題を次のような信号のデジタル処理で解決しようとしているようです。
1.遅延による補正
近くにあるスピーカから出る音を遅らせることで、全てのスピーカからの距離の差を補正します。
もっとも遠くにあるスピーカ(サブウーファ)を基準にして、近くにあるスピーカほど大きな遅延を与えます。左右のスピーカの距離の差も補正されるので、全てのスピーカから出る音は同時に届くことになります。
リスニングポジション(ドライバーズシート)以外ではずれが大きくなり、右ハンドル車の場合後席左が最悪のポジションになります。 自動調整用のマイクを置く位置で、ドライバーズシート優先、前2席優先、とりあえずみんなが幸せ、などの設定が選べますが、上記の順に補正の効果が薄れます。
6種の設定が記憶できるので搭乗人員の数に応じて効果を選べます。
2.周波数特性の補正(振幅)
周波数によってピークやディップが出る現象を補正してできるだけフラットにします。再生周波数全域を5つの帯域(バンド)に分割して補正しています 、補正のステップなどの詳細は調査中です。
またそれぞれの周波数帯域(クロスオーバー周波数)を調整できます。周波数特性には位相の回転(ずれ)もあります。この点についてマニュアルには特に記述がありませんでしたが「デジタル・フェイズ・プロセッサ」と名づけているのですから位相の補正もしているのではないかと期待しています。
3.反射、残響音の補正
スピーカから出た音が車内で反射したり残響を生じることがあります。これを自動調整時にマイクで収音して原音と比較して補正しているようです。
4.自動測定/補正機能
上記の特性を自動補正する機能がH600の最大の売りになっています。リスニングポイントの頭の位置に付属のマイクを置いて自動補正機能をONにすると、各スピーカから音が出てそれをマイクが拾って特性を測定し、補正値を決めて自動設定します。最近の高級AVアンプにもこの機能がついたものがあり、スピーカ位置や部屋の特性を補正してサラウンド効果が大きく改善されるようです。
ただ自動補正時は車内は無人でなければならないので、1人乗車時と5人乗車時の違い(吸音材が増え、内容積が減る)を自動補正することはできません。
6種類のセッティングを記憶できます。
アテンザのオーディオは標準とBOSEの2種類があります。
標準ではメインアンプがHUの中にあるのでそのままではDSPは使えません、DSPはメインアンプの入り口に付けるアダプタです。
標準のHUでDSPを使用するには外部にメインアンプを用意しなければなりませんので詳しい説明はしませんが、基本的な考え方はBOSEシステムと同じです。
BOSEシステムではメインアンプが外付けになっているので容易にDSPを使用できますが、既存の配線を加工しなければなりません 。
これにDSPを加えると下記のようになります。
イエローハットブランドの「電源取りだしコネクタ B2-A」を使用します。 仕上がりはこのようになります。
HUからの出力はバランス信号で出力されています。
オーディオのバランス信号とは信号+、信号−、グランドの3本の線で信号を送り、雑音の多い環境でも影響を受けにくい優れた方式で放送局などプロ用途で使用されます。調光機材など雑音源の多いステージ上を何十メートルも引き回しても雑音を拾わないという耐雑音性の高さをほこります。
これに対してアンバランス信号とは信号+、グランドの2本の線で信号を送る形式で、コネクタや配線が簡単になります。簡単とはいってもオーディオでは特殊なものを除けば数百万円クラスの高級機種でもアンバランス信号が使用されてい るように、短い配線なら高音質機材にも使用できます。
このほかにも正規のバランス信号はインピーダンスが600Ωと規定されているのに対してアンバランス信号では規定されておらず送信側は低インピーダンスで送出し受信側は高インピーダンスで受けるなどの違いがありますが今回の場合は考慮する必要はありません。
アテンザのHUの出力はバランス信号ですが、ほとんどのDSPの入力はアンバランスです。この二つを接続するには二つの方法があります。
バランス信号のうち信号+とグランドの2本のみを使用してアンバランス信号とします。
簡単な方法ですが耐ノイズ性は低下するので車内のようなノイズの多い環境では良質のシールド線を使用するなどの対策が必要です。
下図では2芯シールドを使用していますが、OUT−は使用しないので単芯シールドで問題ありません。CAメンバーのひでTさんはこの方式で3重シールドの高級ケーブルを使用してノイズの混入を防いでおられ、施工例も多くあります。ケーブルが太くて取り回しがやっかいな面はありますが、変換器を使用していないので音質的には有利と考えられます。
バランス信号をトランスやOPアンプなどの変換器を使用してアンバランス信号に変換します。
高い耐ノイズ性を持ちますが変換器が入ることで信号が劣化するおそれがあります。
私はトランスを使用したこの方法を採用しました。細いケーブルでもノイズが混入しないため配線の取り回しが容易で安価な点がメリットです。信号の劣化も使用したトランスが カーオーディオ用のため通常使用では問題は起きないと考えています。
このようにそれぞれ一長一短がありますので、どちらがよいと一概には言えません。このサイトではバランス→アンバランス変換器方式を説明していますが、アンバランス方式を採用される方もその部分を読み替えていただければ十分に利用していただける内容です。